溺愛プリンス



エレベーターが止まったのはそのビルの最上階らしかった。
この前連れてこられた場所とは、また違うようだ。


ん?



「志穂、どうした?」



入り口の前。
ドアに飾られていたロゴを見つけ、思わず立ち止まったあたし。



「ハル……ここってまさか、ルージュ・グレースホテル!?」

「? それがどうした」

「!!」


そ、それって、超高級ホテルじゃ……?
ハリウッドセレブとかが来日した時に泊まってるとか噂になってるあそこ!?


なな、なんで、こんなとこに連れてこられてるの!?

思わずグッと鞄を掴む。


「さ、志穂」

「えっ、あ……」


背中に触れたハルの手。
彼に優しく……と言うか、もう有無を言わさぬ圧力に負けて、あたしは高級ホテルのスイートルームと言う、未知の領域に足を踏み入れた。




う……


「わぁ……」



そこは、別世界。

一面ガラス張り。
そこから見えるのは、まるで宝石をあしらったような眠らない夜の街。


思わず駆け寄って窓に張り付いた。



「こんなに高いところから……夜景って見た事ない」



東京タワーの展望台から見た事あったけど、それとはまた違う。


ふとよみがえった幼い日の記憶。
あの時は、お父さんと一緒だったっけ……。


キレイ……。