溺愛プリンス



いつの間にかあたしをまっすぐに見つめるハルと目が合う。

彼は一呼吸置くと
少しイジワルに目を細めた。



「ずいぶんと、熱心に、“バイト”してるんだな」



その言い方……なんかトゲがあるな。
てゆか、なにイライラしてるの?


「そうですか?」


ムッとして眉間にシワを寄せる。
ハルは何も答えず、また窓の外に顔を背けてしまった。



なによ……。
なんで怒ってんの……。

しばらくすると、車はどこかのビルの地下の駐車場に停車した。

ハルは何も言わず、車を降りるとクルッとあたしを見下ろした。



「早く降りろ」

「あ……ちょ、待ってください」



意味わかんない!
なんの説明もなく、こんな怪しげな場所に連れてくるなんて……。


真っ赤なじゅうたんが敷き詰められたエレベーターに乗り込むと、専属のエレベーターガールが丁寧にお辞儀をした。



「お待ちしておりました」

「……え? す、すみません」


あたしはつられるように頭を下げる。


すると、頭上で「クスッ」と笑う気配がして顔を上げた。
見上げた先には、なぜかおかしそうに手の甲で口元を押さえたハルがいて。

彼は視線だけをあたしに落とすと、まるで馬鹿にしたように目を細めた。


え、あたしなにか間違った?


なに?って目配せしても、ハルはそのまま視線をそらしてしまった。


……ヤな感じ。