溺愛プリンス



帰り支度を済ませ、お店を出た瞬間。
あたしは、肩にかけていた鞄を思わず落っことした。



え、え?

なんでっっ!?



「遅い」

「…………」


地面に落ちた鞄をスッと拾い上げた人物。



「行くぞ。 早く乗れ」


彼はそう言って、あたしの鞄ごと車の中に……。



「え? な、なんでハルが……って、あたしの鞄!」





もう、とっくに夜の10時を回ろうとしていた。

仕込みをしている篤さんに挨拶をして、裏口を出たあたしをハロルド王子が待ち構えていたんだ。


キラキラと煌めくネオン街を車は疾走する。
あたしは、流れる景色をぼんやりと見ていた。

ふと、窓越しにハルがうつる。

長い前髪の向こう側に見える、深い瑠璃色の瞳。
瞬きをするたびに、前髪が揺れてる。




……なんでハルはあたしを……。
どうしてあたしに、構うのかな……。


考えても全然意味がわかんなくて、あたしは小さくため息をついた。



「疲れてるのか?」

「え?」


突然そう言われて、窓から視線を上げた。