「え、いいんですか?」
「ん。志穂ちゃんに食べてもらいたいんだ」
「……」
ドキッと胸が締め付けられた。
顔が火照ってくのがわかる。
手元の和菓子から篤さんに視線を上げる。
あたしの気持ちなんて知らない篤さんは、「口開けて」なんて悪戯っぽく笑う。
とんでもないセリフに「え」と固まったあたしを見て、「はは」って笑うと篤さんは、さらにそれをあたしの口元に寄せた。
「あ、いいです!自分で……」
「いいから。ほら、あーん」
「……」
あーんって……。
……照れる。
優しくそう言われて、とうとう観念して口をそっと開けた。
えーい、もうどうにでもなれ!
ギュッと目を閉じて開けた口に、ふわっと投げ入れられた、小さなおまんじゅう。
「どう?」
「……柚子、ですか?」
「そう。さすが、志穂ちゃん」
篤さんは嬉しそうに笑った。
甘くて、柚子の爽やかな風味が口の中いっぱいに広がった。
……篤さんみたいだ。と思った。
篤さんといると、心がポッとあたたかくなる。
優しい気持ちになる。
好き。
好きです、篤さん……。
「柚子の和菓子って結構あるから、これをなんとかしたいなーと思っててね」
そう言って、再び真剣な眼差しを手元に落とした篤さんに、あたしは心の中で告白した。
いつも、いつも……口には出せないけど。
こうして、胸の中で育ててきたんだ。



