「……」
あたしは、しばらくそこに立ち止まったまま。
王子様の隣で屈託なく笑う彼を見つめていた。
コロコロと表情を変えていたその瞳が、一陣の風と受けてふいにあたしを捕えた。
「……あれ?」
え?
「……って、まさか……しほ?」
ビク!
「おの……えーと、小野田志穂、だよな?」
「っ!」
鮫島のその声につられるように、伏し目がちだった真っ黒な髪の王子様も顔を上げた。
「!」
ひえッ、こっち見た?
……目……青いんだ……。
今までその瞳があたしみたいな庶民に向けられたことはない。
だから彼の瞳の色が何色か、なんて知りもしなかった。
その青い瞳に吸い込まれそうになりながら、茫然と立ちすくむ。
そんなあたしの前に、あっという間に現れた鮫島ヒロト。
「うっわぁ~、久しぶりだなぁ!こんなおっきくなって、俺全然わかんなかったよ」
「……あたしも、全然わかんなかった……」
ニコニコとチャラい笑顔をあたしにまき散らす。
身を乗り出してあたし事を覗き込む彼から、本能的に引いてしまった。
こ、香水きつー……