「見て見て? 鮫島さんと一緒よぉおお」






……サメジマ?


その名前に歩き出した足がまた止まる。


数人の女の子たちがぼんやりと見つめる先には、さっきの王子様。
と、もう一つの影。



真っ黒な髪の王子様の隣で、蜂蜜色の髪がサラサラと光って見えた。

彼は躊躇することなく、王子様の横にドカッと腰を落とすと何やら楽しそうに笑ってる。






「ああ……目の保養だわ……。
ハロルド様に、鮫島さんも負けてないわよね」




あたしは彼を知っていた。



鮫島ヒロト、21歳。

昔、近所に住んでたお兄さんで。
幼い頃はよく遊んでもらってたんだ。



面倒見もよくて頼もしくて。



……好きだったな……。



好青年で、誰からも好かれてたヒロ兄だったけど。

月日と言うのは恐ろしいもので、すっかりチャラ男になってしまった彼は、あたしの目にはまったく映らなくなってたんだ。




あれは詐欺だっ!




彼があたしの初恋のお兄ちゃんってわかったのは、王子様が留学してきてから。

一応首席で大学に入学したらしい彼が、王子様の案内役を頼まれたって……これも噂。