「ハロルド王子には関係ないです。こんなことして……迷惑ってわからないんですか」




手のひらが焼けるように熱い。




目の前には、アーモンドの瞳を見開いて固まる王子様。



その左の頬がジワリと赤くなっていく。
だけどあたしは、そんな彼の視線に負けないようにじっと見上げるとはっきりと言った。






「もう、あたしに関わらないでください」





そう言うと、繋がれた左手が力なく解かれた。

あたしはペコリと頭を下げると、王子に背を向けた。


ウィーンと自動ドアが開いて、少し薄暗い店内に入る。
瞬間、目がくらんであたしはしばらくその場から動けなかった。











……右手が熱い。

その手をキュッと胸の前で握りしめた。



「……志穂……」



あたし達のやり取りを見ていた茜が、心配そうに肩を抱いた。



「いやぁ、それにしても信じられないな! 王子様なんだって?さっきの人。そんな人と友達なんて志穂ちゃんすごいね」



お店の奥からプレートに和菓子を乗せた篤さんが上機嫌で現れた。


篤さん……



唇をキュッと結んで、あたしは慌てて顔を逸らした。
今の顔……見られたくない。





「なにか……あったの?」



そんなあたし達に気付いた篤さんが、顔を曇らせた。





王子がこのお店に来て、驚いたけど……。
あたし、嬉しかった……。


なのに……。
なのに、あの人……。




“幻滅だ”


………その言葉が、胸にトゲみたいに突き刺さった。





あんな人……。

………………大っ嫌い!