「……ど、どうして……あの……」
商品を全部買ってくれて、お店としては嬉しい悲鳴。
だけど、王子はそんなに和菓子が好きだったのかな……。
親日家なのは有名だけど、いつもお茶する時は紅茶にスコーンだったから。
あんなに買って、全部食べるんだろうか。
お金持ち……うんん、貴族の人は何を考えてるんだろう。
グルグルと頭の中で想いをめぐらせていると、いつの間にか王子が目の前まで来ていた。
ハッとして、顔を上げる。
午後の太陽の光で、逆光になった王子の顔がシルエットとして映る。
思わず目を細めて、額に手をかざした。
「“バイト”と言うものが気になってな」
あ、そっか……。
王子様だもんね、そんな庶民のお仕事、知らないんだ。
それで、様子を見に……。
「志穂の別の顔、見ることが出来た」
「え?」
首を捻ると、お店の中に視線を移す王子。
あたしもそれにならって見る。
中では、篤さんと都子が商品の補充を始めているとこだった。
別って……。
働いてる、顔? そんな違うのかな……。
そう思っていると、王子がさらに続けた。
「志穂はあーいう男が好みなんだな。 いや、楽しませてもらった。だから、この店のものを全部買うくらい、安いものだ」
「!」
え!?
ガバッと王子を見上げると、「はは」となんとも楽しそうに笑ってる。
と言うか……面白がってる?
ば、バレた……
しかも、初めてここに来たような人に……
カアアアアと頭に血が上っていくのがわかる。
からかわれたんだ!
し……、
「信じらんないっっ!!!!」



