溺愛プリンス



キレイだな。

ダークブラウンの幹に、淡いピンク色の桜の花びらは。
まるでそのひとつひとつが光り輝いているように見えた。


こんなに美しく咲いて。
あっという間に散りゆくのか……。


なんとも儚い。


桜は、こんなにも美しく人々を喜ばせるというのに。
木の下には、死体が埋まってる……なんて事も日本では言われてるみたいだし。

だから人は、美しい桜を少し不気味だと感じたり、見て楽しむだけで、必要以上には近づかないんだろうか。


俺の周りには、一定の距離まで人は近づいて来ない。
それは、少し離れた場所で目を光らせてるSPたちのせいでもあるけど……。

いつも遠巻きに見られていて、まさに俺も見られるだけの、桜と同じだ。
なんて、皮肉めいた事を思っていた。





そんな時だった。

舞い散る桜に目もくれず、ましてや俺のことなんていない者とする人間がいることに気付いたのは。


彼女は、そんな人混みをぬって、ひとりだけズンズンと歩いていた。
みんながみんな、こちらを眺める中、その姿はすごく目を引いた。


淡く光る桜の花びらのシャワーを全身に浴びた彼女は。

可憐な桜よりもっと、美しいと思ったんだ。





―――――……
―――……



「っ、ハル……」



ふわり、と髪の中に滑り込む彼女の手。
それに気づいて、顔を上げた。