溺愛プリンス



甘い、甘い予感に脳みそまで溶けそうだ。
ーーなんて。ほんとに俺は志穂に溺れてる。



「ハル……好き」

「……、志穂……」

「……好き、ハルが好き……」




鼓膜を震わす甘やかなその言葉に応えるように、深く口付けた。

志穂の甘い蜜に溺れながら、ふと記憶はあの頃へと遡る。







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ヒラヒラと桜の花びらが舞う、
4月のキャンパス。

ベンチに腰かけて、図書館で借りた小説を読みふける。



日本にきて、まだ2週間。
母さんの故郷がどうしても知りたくて、周囲の反対を押し切って実現した交換留学。

たしかにこの国は美しい。
桜は俺の国に咲いてるものとは比べ物にならないくらい、儚げで可憐だ。


だが、それだけ。



とくに、なにも感じない。

あの人は、どうして母さんに惚れたんだろうか。
母さんの奥ゆかしさに惹かれた、と……昔クロードが言っていた気がするけど。