溺愛プリンス



引っ張られてる?

なんとなく、シャツの裾を掴まれてる感覚がして立ち止まる。


視線だけその先に向けると、唇を引き結んだ志穂が俺を見上げていた。




「……志穂?」

「……え?な、なに?」



グググって感じで口角を上げると目じりを無理矢理下げた。



「……」



いやいや、どうした志穂。
小さく震える指先は、それでも俺のシャツを離さない。




「なにって、これじゃ出て行けないんだが」

「! ああ、うん、ごめ……」




俺の言葉に、弾かれたように手を離した志穂。
長い髪で、その表情は見えないけど。



でも……、耳まで真っ赤だな。




「きょ、今日は頑張ろうね!」



パッと顔を上げた志穂は、必死に笑っていて。


…………ああもう。本当にこの女は。




「あたしも、がんばるっ……」