まだ子供だったハルは、メキメキとその頭角を現した。
そこを快く思わなかった大人たちが、ハルの出生のことを持ち出したりしたらしい。
真っ黒な髪は、母親が東洋人だと証明してるようなもんだし。
愛人の子だからと、白い目で見られたハルは自分を隠すようになった、と。
上手く受け流すことで、自分を守ってたんだって。
「あの人が、俺を即位させようって言うのは聞いていた。だから、その前にどうしても自分の目で見ておきたかったんだ。 母さんの産まれた日本を。
昔よく母さんが言ってたんだ。日本の桜は本当に美しいって」
初めてハルを見かけたあの日を思い出す。
ハルは、桜の木の下で。
ベンチに腰かけて、小説を読みふけっていたんだっけ。
ひらひら舞う桜吹雪の中のハルは、ほんとうにキレイだったな。
「……どうだった? 来てみて」
思わずそう聞くと、ぼんやりと遠くを眺めていたハルの瞳が、ふとあたしをとらえる。
瑠璃色の双眼は、今度はしっかりと光を宿した。
「……そうだな。 想定外のことは、すぐに起きた」
「え? それって……」



