溺愛プリンス



な、なにこれ……なんで?



ドクン!



甘い香りに刺激されて、心臓が勝手に反応する。
密着する体から、この音、聞かれちゃいそうだ……。


王子はあたしを抱きすくめるように腕に力を入れて、真上からあたしを覗き込んだ。



「たしかに未成年だ。いろいろ未発達だな」

「なっ!?」



なんですってーー!!?
そ、そう言う事なの!!!?



「ほ、ほほ、ほっといてくださいッ!」





両手で胸を押しやって、王子から距離をとる。

そんなあたしを見て、王子は真っ黒な髪をクシャリと持ち上げると意地悪そうに目を細めた。


ずっと感じてた違和感!
その正体はこれだ。

普段はまるで天使のような微笑みで、周りの人を魅了する。
でも、本当のハロルド王子は……、天使の仮面をかぶった悪魔!

そうに違いない!



あからさまに警戒し始めたあたしを瑠璃色の瞳が捕え、胸がドクンと勝手に反応する。
この動揺がバレないように、あたしはスカートのすそを無意味に整えながら王子から顔を背けた。




「そ、そんなことより!ハロルド王子、これからどこに行くんですか」



無理矢理連れて来られたんだ。
これって、れっきとした誘拐とかになるんじゃないの?



「ああ、腹が減ったからな。 食事だ」


「……しょ、食事?」



ハッとして腕時計に目をやる。


時計の針は、午後6時を指していた。

ごはんに付きあわせるために……こんな手荒な真似したの?
ほんと、この人何考えてんだか。


怒る気も失せて、小さくため息をつくと窓の外に視線を投げた。
ビルの谷間を流れる景色は、いつの間にかネオンでキラキラと輝いていた。