溺愛プリンス



吐息も感じるその距離は、あたしの思考をマヒさせる。
真っ赤になったまま微動だにしないあたしの耳元に唇を寄せて、うんと甘ったるい声で囁いた。



「もちろん、期待してもいいんだろ?」

「…………」




頬に触れていた手は、ゆっくりと頬をなぞり耳たぶに触れ髪をすく。
もう片方の手が唇に伸びてきて、その親指の腹で下唇を焦らすように押す。



「ところで、ひとつ聞いていいか?」

「な、なんですか?」



鼻先が触れて、伏し目がちのハルがあたしを見下ろす。
その距離に耐え切れなくて、聞きかえしながらも瞼を閉じて視界を遮った。



「この服はなんだ?」

「へ? ふ、服?」



パチッと目を開けると、髪をすいていたハルの指先が首筋を降りた。
そのまま服の合わせ目を指がなぞり、ギョッとして身を引く。



「きゃ!あ、だ、だって、その……バイト中にそのまま連れて来られて、だからこの服しか持ってなかったんです」

「ふぅん」



ふ、ふーーんって、自分から聞いておいて!
あたしだって、こんな作務衣(さむえ)なんて着てたくないけど!

さして興味なさそうな曖昧な返事をしたハル。

なぜか不機嫌になったかと思ったら、その手はあっという間にその結び目を解いた。



「って、なにしてんですかっ」

「見てわかるだろ。脱がせてる」

「きゃああああ」



なに言ってんのこの人!なにしてんのこの人!