溺愛プリンス



こ、これがリムジン。
エンジン音が聞こえない。
革製の高級なソファに座ってるみたいだ。



「志穂」



乗り慣れない車に気を取られていると、急に目の前に差し出されたグラス。
その中で、淡いシャンパンが小さな泡を次から次へと生み出している。



「どうぞ」

「あ、ありがとうございます」



そう言って、グラスを受け取ってハッと我に返る。



「い、いりませんッ! あたしは未成年ですので!」


慌てて押し戻すと、王子は丸い瞳を見開いて何度も瞬きをして見せた。
そして、何を思ったか急に手の甲を口元に当てて、肩を震わせた。




「ふっ」


「…………あの?」



突然吹き出した王子。
クツクツと喉を鳴らし、なんとも楽しそうに笑う彼からなぜか目が逸らせない。
こんなふうに笑う王子を初めて見た気がしたから……かな。


呆気にとられてるあたしを横目に、椅子の背にもたれると、その肘掛けに腕を乗せたハル。



「勘違いするな。ただのジュースだ」



え、じゅ、ジュース!?


そう言って「ふん」って鼻で笑われた。

てっきりシャンパンかなにかかと……。
勝手にアルコールだと思ってた。


「いただきます……」



渋々受け取ると、ハルの指先に触れてしまった。

うぅ……。

頬が熱くなるのを感じて、あたしは窓の外に視線を移した。




でも……なぜかいきなり目の前に急に腕が伸びてきて……。
手にしたばかりのドリンクが引き抜かれた。



え?



と、その時。
自然な力で体ごど引き寄せられて、気が付くと王子の胸の中に顔を埋める形になっていた。







「っ!」