溺愛プリンス



小声で制されて、ハッとする。
壁の向こう側を慎重に確認するマルク。



「どうしたの?」



背中越しに覗き込もうとすると、すぐに頭ごと押し込まれた。



「しっ。 王妃だ」

「王妃!?」



って、ことは……ハルのお義母さん?
お義母さんもここに来てるんだ。という事は、ベルト王も?

昨日の貼りつけたようなキレイな笑顔を思い出して、ぶるりと体が震えた。




「志穂、こっち」




マルクに手を引かれ、足早に駆けぬける。
廊下の先は、一面の緑が目の前に広がった。



花の蜜の香りだろうか。
果実の香りだろうか。


……甘い。




キレイに選定された庭木の影に身をひそめる。
そこから顔を覗かせると、マルクはクイッと顎をしゃくって見せた。



「いた。 あそこ」

「っ!」



芝生に両手をついて、息をひそめて覗き込む。



あ……!



その先には、たくさんの草花に囲まれたハルの姿が。
テラスの椅子に座って、気怠そうに空を見上げていた。



「……ハル……」