溺愛プリンス



マルクは青ざめていくあたしを足先から頭の上までなめるように見て、首を傾げた。



「……にしても。お前のその恰好なんだ?」

「へ?」



か、恰好?

肩の力が抜けていく。
自分の足元に視線を落とし、服の裾をつまんだ。


「バイト先の制服です」

「ばいと?」



キョトンと瞬きをしたマルク。
バイト、知らないのかな?


「仕事着ですよ。あたし、これしか持ってなくて。ベスが貸してくれる服はどれも素敵なんですけど、やっぱり着慣れてるものがいいなって」

「ふぅん。志穂は板前してんのか。人は見かけによらないなぁ」

「……は!?」



板前って、あたしそんなこと一言も言ってないんですけど!
ギョッとしていると、ひとり納得したようにマルクはあたしの手を引いて歩き出した。

うーーん……、でもたしかに割烹着みたいだし、こういう服に馴染みのない人からしたらお寿司屋さんとかに見えるのかな?

板前……。

動きやすいからって、これで来たの失敗だったかな……。




「……」


それにしても、マルクはどうしてこのお屋敷に詳しいんだろう。
あのラフな格好……、もしかしてここに仕えてる使用人のひとりとか?

抜け道を知ってるくらいだもん。
庭師、だったりして。


でも……じゃあなんでベスとあんなに親しそうに……。



「止まれっ」