溺愛プリンス


要塞の中は、まるで別世界だった。
煌びやかな装飾品。
豪華な家具、それに絵画がたくさん壁にならんでいて。


マルクはそれに目もくれず、廊下を進んでいく。
ここを抜ければ庭に出られるみたいで、はやる気持ちを抑えマルクの背中を見つめた。



屋敷の中は朝食のいい香りで包まれていた。
ゴクリと生唾を飲みこんで、まるで忍者のように壁にそって進む。



いい匂い。
美味しそう……。



「おい志穂!顔を出すなっ」



そう言われて、ついでにグイッと手を引き寄せられた。
見上げると、壁にピッタリとはりついたマルクがジロリとあたしを睨んだところだった。



「ごめんなさい……いい匂いだから、つい……」

「つい、じゃねぇよ。中庭に着く前に見つかったら追い出されるぞ」

「はい、すみません……」



シュンとうな垂れると、チッと舌打ちが聞こえ、ますます身を小さくする。
そんなあたしを、マルクがチョイっと覗き込んできた。

身に覚えがある距離にビクリとしてしまう。




「な、なんですか?」