「この俺から逃げるなんて、いい度胸してるな」
「…………」
えっ
何を言われたのか、さっぱりわかんなくて。
きょとんと王子の目を見返していると、まるで天使の羽根を散らしたような極上の微笑みが向けられた。
え、ちょ、なに?
なんか図書館から違和感あったんだけど……。
「志穂、俺はキミに興味がある」
はい?
今、なんて……。
今度は目もくらむような甘い甘い、囁き。
「それじゃ、行こう」
その毒牙に、放心状態のあたし。
呆然としてままのあたしの肩を抱くように歩き出した王子は、口角をキュッと上げて笑みを零す。
「……」
それはそれは楽しそうに。
そしてなにより……イジワルに。
それを理解する前に、あたしは手首を掴まれていて、あっという間に車に押し込められていた。



