溺愛プリンス





広間へ戻ったハルの姿が見当たらない。
どこへ行ったんだろう。



辺りを見渡していたその時。
ホールに流れる優雅なワルツが、まるで波が引くようにやんだ。


ダンスを踊っていた人たちが吸い込まるれるように視線を上げる。
その先を追いかけて、ハッとした。


真っ赤な絨毯の階段の上。
そこから現れたのは、恰幅のいい銀髪の美しい男性だった。

紺色の軍服のような服。


あの人が……?

ゴクリ、と思わず唾を飲みこんだ。





「舞踏会も残すことろ、あとわずかとなりました。みなさま、楽しんでいただけていますか?」



低くて、でも柔らかな声色。
ホールに響き渡ると、ワッと拍手が巻き起こった。



ワルツを踊っていた人々はみんな仮面をしている。

でも、階段の踊り場でこちらを見下ろしている人は、その仮面をしていなかった。
シャンデリアに輝く銀色の髪。
深くシワの刻まれた顔。
品のあるくちびげ、それに……。



―――瑠璃色の瞳。



瞳の色が、ハルのそれと同じ。


あの方が、ベルト王なんだ……。



「あ……」



ベルト王の後ろに、見覚えのある黒髪を見つけた。