「ハルのおたんこなすって言ったんです!」
「お、たん……、な……?」
思わず叫んだあたしに、ハルは驚いたように身を引いた。
切れ長の瞳が丸く見開かれ、何度も瞬きを繰り返す。
「だってそうです!
いきなりヒロ兄には交換留学でハルは大学には戻ってこないって言われるし、連絡はくれないし、どうしたんだろうって。
そしたら、ベスからハルが軟禁されてるって聞いて……、ど、どれだけ心配したと思ってるんですか!」
「し、志穂、落ち着け……」
「落ち着けるわけがありません!
やっと逢えたと思ったら、なんだか怒ってるし。
ずっとハルに逢いたくて……、それなのに、それなのに……。
あたしに言ってくれたことは、全部ウソだったんですか?
からかって、遊んでたんですか?
それなら……ちゃんと言ってください。
じゃないと、あたし……バカだから、ずっと、待っちゃいます……」
「…………」
もうぐちゃぐちゃだ。
とにかく、悔しくて。
腹が立って。
自分がなにを言ってるのかもわからなくて。
秘めていた想いをぶつけるように、言葉が次から次へとあふれてくる。
止まらない。
止められない。
ギュッと両手を強く握りこむ。
息もできなくて、苦しくて。
うつむいた視界の中で、ハルの動く気配がしてきゅっと身を固くする。
ためらいがちに動く腕が、ゆっくりこちらに伸びてくる。
……ハル……。
我慢していた涙が、はらりと頬を伝った、その時だった。



