溺愛プリンス



季節は10月に入り、秋の色を濃くしている。
テラスに出ると、胸元をざっくりと露出した肌に冷たい風がしみた。


ハルは、呆気なくあたしの手を解くと視線だけを落とした。




「――それで?」




ビクン!


低い声。

やっぱり怒ってるんだ……。
あたしが、勝手にこんな場所に来ちゃったから……。


まっすぐにあたしを見下ろすハル。
射抜くようなその視線に、たまらず身をすくめた。

おずおずとつけていたマスクを外す。



「なんで、志穂がここに……。誰だ、誰に連れてこられた?」

「だ、誰って……」



そ、そこが重要なの?
ポカンとハルを見上げる。

腕組みをして、なぜかすごく焦ってるように見える。


「まあ、いい。とにかく志穂、早くここから立ち去れ」

「え?」



たち、され……?
出ていけっていうの?


やっと、やっと逢えたのに……?


このドレスの事だって気づいてないみたいだし……。
それに、ネックレスだって付けてきてるのに……。



…………バカ。



「ハルのバカ」

「……なんだって?」



視界がにじむ。
キュッと唇をかみしめて、思い切りハルを睨んだ。