溺愛プリンス



……、ハル、いない。


ここへきてからいったいどれくらいたったんだろう。

何曲目かのクラシック音楽を耳にして、壁にトンと背中を預けた。


広間にはトレーに飲み物を乗せた人が、たくさん行きかっていて。
飲み終わるとグラスを交換してもらっている。

あたしもすでに3杯目。


空になったワイングラスを恨めし気ににらむ。



「……飲みに来たんじゃないっつの」



ハルは、挨拶回りをしてるって言ってた。
ショーンさんはここを通るって言ってたけど、ちっともその気配はない。


ベスの姿は何度か見かけたけど……。




はあ……。



溜息をついた、その時だった。




「Bonsoir, ou une fleur de mur.
Si vous aimez ma chanson vous dansera avec ?」

「あ……」



目の前に影が落ち、見知らぬ男性があたしを見下ろしていた。