お母さんを亡くしてすぐにこのお屋敷に連れてこられたハル。
ハルは、ここで来る日も来る日も、勉強に明け暮れた。
社交界にデビューしたのは、このお屋敷に来て1年もたたない頃だったそうだ。
そこで待っていたのは、大人たちの聞こえなくてもいい裏の声。
母親が東洋人というだけで、差別的な目を受けた。
「それでもハロルド様は、弱音を一切言ったりしませんでした。
表情ひとつ変えず、笑顔で皮肉をかわし、さらに何も言えぬように一つ上をいく言葉で返された。波風を立てず、穏便に物事が進むよう、常に考えていらっしゃいました」
「…………」
そんなの、知らなかった。
貴族の人は、そのすべてが華やかで。
きっと、見るものすべてがキラキラしてるんだろうって。
あたし、ずっとそう思ってたから。
王子様なんて、住む世界が違うし。
身分違いなんて、もうわかりきってる。
それなのに、あたしは……。
ねえ、ハル。
あたしに、何ができるかな。
今まであたしがもらってた優しさの半分でも、ハルに返せるんだろうか。
ハルに会えるのは、明日。
運命の舞踏会が、すぐ目前に迫っていた。



