ギョッとしてさらに身を引くと、ベスはムッとしたように頬を膨らませて見せた。
「兄の事は、愛称で呼ぶのに?」
「!……そ、それは、ハルが……無理矢理……」
「呼んでくれなきゃ、なにも教えてあげないから」
はあっ?
ポカンと開いた口が塞がらない。
どこかで聞いた事あるようなセリフだ。
あの兄にして、この妹あり……。さすが兄妹。
ツーンと顔を背けてしまったベス。
あたしは気付かれないように小さくため息を零すと、意を決して声をかけた。
「ベ……ベス……、あの、ここはどこなんですか?」
そう言うと、ベスの表情がまるで花が咲いたようにパッと明るくなる。
「ここ?ここはね、さっきも言った通りファブリック伯爵のお屋敷。ファブリック伯爵っていうのは、お父様の身内なんだけど、使っていなかったから、お父様が譲り受けて、その後、兄が幼少期に過ごしていた場所なのよ」
「ハルが?」
ベスはコクリと頷くと、今度は少しだけ寂しそうに目を細めた。
ハルの子供の時のおうち……



