溺愛プリンス


お酒を持つ手が少しだけ震えた。

トクトクトク……って、小気味よい音がして、ハルはそのままお酒を仰いだ。



「……」




ハルと向かい合うように座って、キュッと膝の上で両手を握りこむ。

汗……かいてる。


静かな部屋。
窓の外から、水の流れる音だけが静かに響いている。


チラリ、と視線を上げればあたしと同じ浴衣を着たハルがいた。


真っ黒な髪は、少しだけ濡れて艶めいている。
伏し目がちの瞳。
長いまつ毛が、ゆっくりと、まるでスローモーションのように瞬いた。


浴衣……似合うな。



聞きたい事はたくさんある。
言いたい事もたくさんあったはずなのに、いざ、ハルを目の前にすると何も浮かんでこなかった。



ただ、あたしの中に、1つだけ残ってるもの。
シンプルな、この気持ちだけだ……。




”嬉しい”

ハルに会えて……話をしてくれて。

……嬉しいって思ってる。




あたし、本当はこんなにハルに会いたかったんだ……。