溺愛プリンス



視線を感じて顔を上げると。




「……!」

「……不思議な表現だな」





あたしのいつもの指定席。

……そこに、いた。





真っ黒な髪。
まつ毛にかかりそうな前髪が、彼の瞬きに合わせて揺れる。


その奥の、瑠璃色の瞳があたしを見つめていた。










え?




ちょ……な、なんで?


なんで、お、お、王子?







恥ずかしげもなく、大きく開けた口をパクパクさせたあたしから王子はスッと空に視線をめぐらせる。



「空が泣いてる……か。 雨でも降ってるならそう例えても変じゃないけど……」



窓枠に腰を落としていたハロルド王子は、そう言って楽しそうな笑顔を向けた。





「……君は変わってるね」

「…………」





日本人よりも。
きっとその髪は綺麗だ。



そう思った。