溺愛プリンス


「志穂ちゃん、ごめんね?」


……え?

驚いて、なんども瞬きをするあたしに、篤さんはガバリ!と頭を下げた。


「あ、篤さん?」

「この前は、本当にごめん!俺、あんな言い方して……すごく後悔してる」

「……」


あんな、言い方?


「志穂ちゃんの気持ちが本物じゃないなんて、俺、偉そうなことを……。
勇気を出して言ってくれたのに、俺間違ってたって思ってて……」

「……」


篤さん……。
優しいな……だから、ずっと黙ってたのかな?それを……考えてて。

あの返事は、篤さんなりに考えて、あたしを極力傷つけないための言葉だったはず。




「篤さん、あたし……後悔してません。ちゃんと伝えられてよかったって、そう思ってます」

「……志穂ちゃん……」



雨音が響く。
ドキドキと加速する心拍数。


篤さんの手が、肩に触れる。
運転席から身を乗り出して、近づく距離。


え、うそ……篤さんに、キスされるの?


前髪が触れる距離、甘い吐息がかすめるその距離で、あたしはそっと瞼を閉じた。






――――……『俺は求めてる……』








『こんなふうに……ずっと、な』





「…………」

「……志穂ちゃん?」



なんで?

なんで……こんな時に、アイツの顔なの……。



「……篤さん」



あんな、傲慢で、俺様で……。
最低なヤツ。



「…………ごめんなさい」


ごめんなさい。
あたし……どうかしてる。

篤さんのキスを拒んで……瞼の裏に浮かんだのは

ハルだった……。