溺愛プリンス


薄暗い、裏口。
ほの暗い街灯の灯りを受けて、篤さんがあたしの前に立っていた。



「濡れて帰るつもり?」

「あ……」



ニコリと優しく笑いかける篤さんに、あたしは一瞬なにも言い返せなかった。

口ごもっていると、篤さんは傘をヒョイっと持ち上げてみせる。



「送ってくよ。車、乗って?」

「ええっ!?そ、そんな……大丈夫です!雨だってすぐ止むと思いますし!」



ブンブンと首を振って、あたしがそう言い終わったのと同時。
カッと闇夜が明るく光り、雷鳴がとどろいた。



「……」

「この分だと、しばらく続きそうだね。風邪でも引いたら大変だし。送らせて?」

「でも……」


「ね?」なんて上目使いで言われたら、断れるはずもない。


「……じゃあ……すみません、お願いします……」

「よかった。じゃ、すぐに車回すから、表まで出てきてくれる?はい、これ」

「あっ、」


篤さんはそう言って、あたしの手に傘を持たせると、自分は雨の中飛び出して行ってしまった。


あたしはしばらく何も考えられなくて……。

手に触れた篤さんのぬくもりとか、嬉しそうな笑顔とか……。
とにかく、頭の中がぐちゃぐちゃで泣きそうになっていた。