ジッと見ていた緑はゆっくりと閉じられ、また寝る体勢に入ったものと思われる。
でも、そこで寝られても困るんだけどな。
頭があったかい。
そういえば昔、ヒロくんもこうしてお昼寝してたっけ。いつからだろう。そうしなくなったのは。
「ね、なんか弾いて」
このヒトはこの50分間、寝る気なのかな? と思った私は、静かな曲を選んだ。
「‥アンダンテ」
「はい」
ストラヴィンスキーの
5つのやさしい小品
「でもその曲、すぐ終わっちゃう」
「あ‥」
そんなこと言っている間に、もう既に弾き終わってしまった。
どうしようか悩んだけど、私、弾ける曲ってあんまりないんだよな。
すると、突然起き上がった頭。
「あっち」
「え?」
「あったかそう」
このヒトの視線の先を辿ると、窓際に陽だまりがあった。
「行こう」
そう言ってまた、ここに連れてこられた時のように指が絡まる。
不思議なヒトだなあ。
なんだか、心の中があったかくなる。
「座って」
紅い柔らかな絨毯の上。私が座ると、このヒトはやっぱり膝に頭を乗せた。
「寝るんですか?」
「うん」
真っ黒な髪に触れてみる。ふわふわして、柔らかくって、猫みたいだった。
ゆったりとした時間が流れて。
病院の中とは違う時間の流れ方。
もっとこう‥穏やかで、優しい気持ちになれる。
しばらくして、コロンと寝返りを打ったこのヒトの顔が、お腹を向いた。
サラリと流れた、真っ黒な髪の隙間から見えたのは、キラリと光るピアス。
それは、落ち着くような瞳の色とは対照的な色。燃えるような赤を宿した、小さなピアス。
「ねぇ」
「あ、起きてたんですか?」
その緩く囁くような声がお腹に響く。
「お腹‥鳴ってる」
「わっ、聞かないでください」
恥ずかしくって、慌ててお腹とこのヒトの顔の間に手を入れた。
「ふふ」
大きな背中を丸めたこのヒトの、その綺麗な横顔。唇が少し持ち上がったの。
「あ‥」
なんだろう。
またお腹が鳴った。
でも、そこで寝られても困るんだけどな。
頭があったかい。
そういえば昔、ヒロくんもこうしてお昼寝してたっけ。いつからだろう。そうしなくなったのは。
「ね、なんか弾いて」
このヒトはこの50分間、寝る気なのかな? と思った私は、静かな曲を選んだ。
「‥アンダンテ」
「はい」
ストラヴィンスキーの
5つのやさしい小品
「でもその曲、すぐ終わっちゃう」
「あ‥」
そんなこと言っている間に、もう既に弾き終わってしまった。
どうしようか悩んだけど、私、弾ける曲ってあんまりないんだよな。
すると、突然起き上がった頭。
「あっち」
「え?」
「あったかそう」
このヒトの視線の先を辿ると、窓際に陽だまりがあった。
「行こう」
そう言ってまた、ここに連れてこられた時のように指が絡まる。
不思議なヒトだなあ。
なんだか、心の中があったかくなる。
「座って」
紅い柔らかな絨毯の上。私が座ると、このヒトはやっぱり膝に頭を乗せた。
「寝るんですか?」
「うん」
真っ黒な髪に触れてみる。ふわふわして、柔らかくって、猫みたいだった。
ゆったりとした時間が流れて。
病院の中とは違う時間の流れ方。
もっとこう‥穏やかで、優しい気持ちになれる。
しばらくして、コロンと寝返りを打ったこのヒトの顔が、お腹を向いた。
サラリと流れた、真っ黒な髪の隙間から見えたのは、キラリと光るピアス。
それは、落ち着くような瞳の色とは対照的な色。燃えるような赤を宿した、小さなピアス。
「ねぇ」
「あ、起きてたんですか?」
その緩く囁くような声がお腹に響く。
「お腹‥鳴ってる」
「わっ、聞かないでください」
恥ずかしくって、慌ててお腹とこのヒトの顔の間に手を入れた。
「ふふ」
大きな背中を丸めたこのヒトの、その綺麗な横顔。唇が少し持ち上がったの。
「あ‥」
なんだろう。
またお腹が鳴った。

