あたしは原田乃亜(のあ)。

シゴト中なのだが、花束を肩に乗せて、病院にいる。

同僚が、会社の屋上から落ちたのだ。

それで、お見舞いの係に任命された。

おかしい。

じゃんけんでその立場を勝ち取ってしまったのだけれど、

あたしが、こういう重要な場面で、勝つはずがないのだ。

落ちた同僚は、社員の女子から絶大な人気があるヤツで、

みんなが、この役を買って出たがった。

あたしは、忙しさから現実逃避したくて、じゃんけんに参加しただけだ。

なのに、参加した瞬間に、

『何か、勝つ気がする』

と、思っていた。

勝つたびに『ほら』って、妙に無感動だった。

そして、ここにいたりする。