外は、猛吹雪だった。今日は和也が休みだと言うので、いつもとは違う、市役所側の通学路を通る事にした。市役所側のルートなら、途中グラウンドを突っ切れば近道にもなるからだ。

 坂を登り、階段を上がりきって、少し走るとグラウンドがある。通学路はグラウンドを迂回するようになっているが、それではかなり大回りだ。グラウンドを突っ切れば、大よそ半分で済む。昨夜からの大雪でグラウンドには人が通った後がない。僕はどうしようか迷っていたが、もう時間がなかったので、思い切ってグラウンドを通ることにした。

 吹雪は一向に収まる気配がなく、いつもはグラウンドの向こう側に見える校舎も殆ど見えなかった。グラウンドの周囲だけは、さすがに少しは雪が踏み固められていて、最初は調子よく進むことができた。だが、進むに連れて、足首までだったのが膝まで、膝までだったのが太ももまで、そしてついに腰の高さまで埋もれるようになってきていた。僕は急に不安になり、後ろを振り返った。

 どうやらほぼグラウンドの中央にきていたようだった。

 この日の吹雪は、僕もそれまで経験の無いような猛烈なもので、地面に叩き付けられた雪が、再度吹き上がり、視界は僅か数メートル程度だった。

 僕は、少し前にテレビでみた『八甲田山』を思い出し、急に恐怖心が沸いてきてい。そして、遠くの方から始業時間を知らせる鐘の音が聞こえてきた。

 遅刻・・・

 まだ、僕は恐怖心とは裏腹に、自分の置かれている状況が良く掴めてなかったようで、まだそんなことを考える余裕はあった。しかし、それから十分くらいかけて、僅かに二、三歩しか進めず、もはや僕の体力で進める状況にはないことを、ようやく理解したのだ。

(もう、うごけねぇ)

 校舎一階のグラウンド寄りに、職員室があった。誰か先生が見つけてくれれば‥、そう思い校舎の方を見やったが、そもそも校舎がぼんやり見えるだけで、猛吹雪のため、職員室に人がいるかどうかも確認できない。