正直、僕は喧嘩が嫌だった。いつもはふざけでばかりの僕だったが、体が小さく、力もなく、喧嘩は弱かった。だが、そんな姿を真夏に見られるのもいやだった。

「おめえらなぁ、やめどけよ、キックベースで負けた位で、喧嘩なんかすんなって。恥ずかしくねぇのが?」

 子供ながらに、精一杯、大人の対応をしようと思った僕の言葉は、彼らには響くどころか、逆に挑発となったようだった。

 そこから一気に喧嘩が始まった。

「真夏は、下がってろ。ででくんな」

 僕がそういうと、琢己達との取っ組み合いの喧嘩が始まった。琢己は町の少年ラグビーチームに所属していて、体当たりはラグビー仕込みだったから、取っ組み合いになるとめっぽう強い。正直言って僕の勝てる相手ではなかった。それでも、真夏が見ている。僕は逃げるわけにはいかなかった。

 男5人同士が入り乱れる中で、途中和也が僕を助けてくれたりしていて、しばらくは何とか勝負になっていたが、その内、だんだん自分たちの形勢が悪くなってきていた。

 気が付くと、僕は鼻血が出ていて、白いTシャツが真っ赤に染まっていた。そして、相手も僕の鼻血に染まったTシャツを見て一瞬ひるんだその瞬間だった。

「もう、やめんかー」

 琢己が横に吹っ飛んだ。真夏が横から体当たりして突き飛ばしていたのだ。