それからの真夏は、あっという間にクラス内での存在感を増していった。スポーツは万能で、勉強もとてもよくできた。僕は体は小さかったし、ドッチボールは苦手だったので、彼女に勝てるのは勉強ぐらいだった。

 そして、どうしても僕は彼女には、その勉強で、勝たねばならなかった。女の子にスポーツも勉強も負けるわけにはいかなかったのだ。

 でもそんな彼女も生粋の負けず嫌いだったようで、テストの点数で僕に負けると、

「くそー、わたなべに負けてしもうた~、でれぇくやしい~」

 と机を叩いて悔しがっていた。そんなに悔しがらなくてもいいのに、と思ったがそんなところも真夏らしいところであった。

 六月を過ぎ、すっかり学校にも溶け込んだ真夏と僕らは、寄り道をしながら、よく一緒に帰ったものだった。草むらの中の沼地で水カマキリやゲンゴロウを捕まえたり、川で沢蟹を取ったり、笹船を作って川に流しながらレースをしたりして、様々な遊びをしながら帰った。

 そうした中で、クラスの中と同じように、僕の心の中での存在感は確実に増していった。

 僕らの学年は、新学期が始まってから、なぜか、ほかのクラス同士と仲が悪く、度々大人数で喧嘩をするようになっていた。学校ではあまりおおっぴらに喧嘩ができないので、帰りに待ち伏せされたりするようになった。