昼休みのドッチボールは、男女交えてやるのだが、五年生にもなると、体格や運動神経に男女差が出てきていて、休み時間にやるときは運動が苦手な女子は周りで応援することが多くなっていた。

 だから、一緒にやるのは、運動が得意な数人になっていた。そんな中、喘息だと言っていた真夏が、ドッジボールをして大丈夫なのか心配したが、真夏は、トンでもない運動神経の持ち主だった。

 投げるボールで片っ端から男子を撃破。それまでエースだった和也のボールも軽々キャッチ。動きも速い。  
 さっきまであんなに茶化していた和也の意気消沈振りはかなり笑えた。今度のクラス対抗ドッチボール大会ではうちのエースとなるに違いなかった。

 彼女が初日の授業を終えて帰るとき、声をかけてきた。

「わたなべの家はどっちの方なん?わしは吉住町ってとこなんじゃけど」

「わし?・・・」

「あっ・・」

 真夏は、舌を出して苦笑いを浮かべていた。僕も、茶化しながら笑った。僕は、隣町だから帰る方向は同じだ。

 ところで、初日から呼び捨てか?普通は「わたなべくん」だろ?と思ったが、とりあえず許すことにした。

「方向が同じなら一緒に帰ってくれん?」