「ひゅーう ひゅっ」

 勢い良く、甲高い口笛が公園に響いた。

 青い空に、僅かに雲が浮かぶだけの、よく晴れた、夏の日の午後だった。

 野球に興じていた僕達が、一斉に振り返ると、公園の入り口近くにあるベンチの横に、太陽の陽射しを眩しそうに右手で遮りながら、白い綺麗なワンピースを着た女の子が立っている。

 君は、少しはにかみながら、僕を手招きしていた。

 思えば、君と会ったのはあの日が最後となってしまった。

 もう、二十六年も昔の話だ。

 今でも偶にそんな君の姿を夢に見るときがある。

 最近では、そもそもこの記憶自体が自分自身で作り出した幻想なのではないだろうか、とさえ思う、そんな微かな記憶だ。


 君は、元気で過ごしているのだろうか。