鍵を閉めて振り向いたとき、暗がりに人影が浮かんだ。


「大丈夫か?」

急に聞こえた低い声に尋常じゃなくビビってしまった。


「ひゃあぁぁぁぁ」

私はまた腰が抜けてしまった。


でも崩れ落ちたはずの私なのに、不思議なことに地面に太ももが付いていなかった。



「わりぃ。またビビらせたな」

私は声の主に抱きとめられていた。私はこの声の主がすぐに誰だかわかった。


その匂いも抱きしめられた感触も驚くほど覚えていた。


「圭吾さん…」


私は力ない体で、それでも圭吾さんを見た。


圭吾さんは力の抜けた私を横抱き、俗にいうお姫様抱っこをして近くのベンチまで連れて行ってくれた。