恋と狼と陸上と…

「席は?」

教室につくとその人はぼそっと言った。


「窓際の後ろから2番目」

その人は私の席まで行き、椅子を引いて、私を椅子に座らせた。


「ありがとうございました」

私は「ふぅ」とため息を漏らすその人にお礼を言って、机の中を探した。


「あった!お財布ありました」

私は子供のように喜んだ。


なくなってたらとか、どこか別の所に置き忘れていたらどうしようって、内心不安だったんだ。


「よかったな。もう立てるか?」

その人は私の頭をなでた。胸がキュンとなった…え?今の感覚って何?


「はい、たぶん」

私は始めての感覚に違和感を感じたものの、お財布を鞄に入れて立ちあがった。もう大丈夫みたい。


その人は私が立ったのを見届けると、踵を返して歩きはじめた。私は慌ててその人の後を追った。


「カーーーーン」

不意に何かが落ちる音がした。

「うわーーーーー」

私はその人の背中にしがみついた。しがみつく手が震えた。


「うわっ。おまえ、どんだけ怖がりなんだよ」

その人がしがみついた私の手をほどきながら言った。