「信じるか信じないかは、みなさんのご自由です。
でも、これからお話するのはわたしが知る真実です。
まず、この『水盤』に宇宙を映すにあたって、みなさんに理解していただかなくてはならないことが二つあります。
ひとつは、時間というものがみなさんが考えるような直線的なものではないということ。
イメージとしては……
一つの時間軸は螺旋を描いて回る渦である、と想像してみてください。
その時間軸は、ある地点からまた螺旋を描いて分かれていく。
つまり、選択肢Aを選んだ場合とBを選んだ場合の生の分岐ですね。
宇宙空間はそんな螺旋を描いた時間の渦で満たされている。
今、わたし達がいる現世と、便宜的に直線としてとらえた時間的過去世。
また、わたし達がいる現在と、少し遡った過去。
実は、これは過去世であって過去でなく、現世であっても現在ではない。
夫々の関係には繋がりはあっても、座標としての位置関係に意味はないということです」
葵さんは、姉蓮の無作法な言動はおかまいなしに、マイペースで話を進めていきます。
「それって、時間の概念は無意味ってこと?」
「そしてふたつめ。わたし達の存在とは、螺旋が描くパラレル線上に存在する点の集まりであるということです。
つまり、その瞬間瞬間が真実であって、ひとつが全体であり、全てがひとつであるということなのです」



