いや、もう、ほんの僅かな距離だったのですが、限さんの軽トラが路上で立ち往生してしまったらしいのです。



しばらく風を切って走ると、路肩で大きく手を振る限さんの姿が目に入りました。

純一郎くんもその姿に気付いたのでしょう、ゆっくりと減速し、バイクは丁度いい具合に軽トラの前で止まります。


「いやぁ、悪いね二人とも」


限さんは首に巻いた手ぬぐいで、額に浮かんだ汗をぬぐっていました。


「どうにも一人じゃ動かせんで参ったわ。婆さんは腰が悪いしのぉ」

「って、何を、ですか?」


僕は全く持って訳が分からず、トラックの後ろに回って荷台の中を見渡しました。

宝の山……を期待した僕の思惑を裏切って、そこにはたった一つの物体が風呂敷に包まれて置かれていただけでした。


「それじゃよ、それ。その水盤じゃ」


僕は期待を込めてその風呂敷の包みを解きます。

そこから現れたのは、丁度両手で抱えられる程の大きさの、見事な彫刻の施された黒光りした石の水盤でした。