花火大会当日。


あたしは浴衣と闘っている真っ最中。


約束は6時で、今は4時だから余裕はあるんだけど、どうしても浴衣が着れない。


普通の着物は着れても浴衣は着れないという、なんとも不可思議かつ情けない状況に陥っていた。


「雪帆~早くしないと髪をセットする時間無くなっちゃっうわよ?」


「母さ~ん、助けて~」


見兼ねた母さんが助け船を出してくれた。



「あんたまだそんなことやってんの?」



ぶつぶつと言いながらも早くも帯が出来上がった。


「はい!できた!そこ座りなさい!やってあげるから!」



息をつくひまもなく椅子に座らされる。


ラッキー!タダじゃやってくれないんだよね~♪

母さんの突然のサービスに素直に従うことにする。



「ふふふ。メイクもしてあげるわ。それでお持ち帰りされちゃいなさい」

「ぶっ!」


母さんの言葉に、ソファでお茶を飲んでいた父さんが吹いた。



「な!何言ってんの!親がそうゆうこと言わないでよ!」


「あらぁ、相手は蓮君でしょ?だったらいいじゃない」