ブンガクは、短く刈り込んだ黒髪の頭を右上腕で掻きながら残念そうに言った。

「実は、65533回目で勝てたんだ」

「条件は?」

「聞きたい?」

「ぜひ」

「クーロン参戦」

「なぜ、それを1番最初にやらないの」

「まあ、何となく・・・楽したいから」

 チャオクーンはブンガクの言葉に眩暈を憶えた。

 どこの種族とも判別出来ない典型的な宇宙混血であるブンガクは、社会的な上下関係や責任感と言うような感覚がもともとない。

 基本的に面倒な事を嫌う性質があった。

 とは言え、不思議と勤勉な所もあるので、扱い方次第の難しい人材だった。

 しかし、そんな欠点を上回るだけの能力がある事も事実だ。

 そんな彼を運用出来るという実績もあり、チャオクーンがパートナーとして、選ばれているのも事実だった。

「それで、その場合の勝算は?」

 チャオクーンは少し鼻にかかった声で訊いた。

 彼女は典型的なムスカ系人だ。基本的に調和と安定を求める。それが誰の為の物であるかは別にして。

 この場合は、このクーロンを任された2人の安定と調和と言う事かしら。

 と内心思いながら、彼女はブンガクの答えを待った。

「聞きたい?」

 ブンガクが茶目っ気たっぷりに言った。