スケールデータに拠れば全長約300キロ、最大半径30キロの細長い棒状の艦形をしていた。場所は第5公転軌道にある小惑星帯だった。

「リユレイ殿は初めてですか」

「資料には目を通してありますが実物は初めてです。何しろ独自規格艦ですからな。艦長はご存知で?」

「1度だけ、ハニメニ・ニーダ戦域の前線で相手にした事がある。まさに、あれは星を食べる船だ」

 バンガは記憶層からプラント艦の貪欲なまでの資源採掘加工能力を思い出していた。

 あの時のプラント艦は全長1千キロ、補給物資の供給能力は戦域全体の1割を賄う事が可能だった。

 考えただけでも恐ろしい存在だった。

 反乱勢力との主戦場でもあるハニメニ・ニーダ戦域は、その名のハニメニ系とニーダ系の距離だけでも数パーセクある。

 物量で劣る反乱勢力が、その戦線を維持するのに必要な戦闘艦隊を影で支えているのがプラント艦と言う存在だった。

 プラント艦と言うカテゴリーは簡単に言えば、戦闘艦隊を影で支える補給部隊の能力をを1艦で賄う事が出来る艦だ。

 1艦で資源採掘、生産加工、貯蔵、輸送をこなしてしまう。補給基地が資源採掘惑星ごと移動している感じだ。

 バンガが見たプラント艦は、まるで果物の皮を剥くように惑星の地表を削り取っていた。

 艦首の超振動採掘システムで破砕した全ての物質を飲み込み、選別加工して溜め込んで行くその様は、正に星を喰らう怪物だった。

 そのイメージが城塞システムの情報共有機能によってリユレイの記憶野に展開された。

 同時に、本当にこんな物がと思うリユレイの驚嘆した感覚が、バンガに返ってくる。

「ふむ、感覚系の共有まですると言うのは気持ちの悪い物だな」

 ゴロゴロと堅い鉱皮で覆われた喉を鳴らしてバンガが感想を述べた。

「慣れてしまえば、便利な物ですよ。言葉として表現する必要も無くなりますからな」

 リユレイは長い首をさすりながら答えた。

 自分に無い感覚器は代用感覚として処理されるので、バンガの喉を鳴らす感覚が、リユレイには喉のかゆみとなって感じられた。

 リユレイは心理コマンドで、このやり取りを聞いているベイグに、自分とバンガの感覚共有深度を浅くするよう指示した。