急に闇が膨らみ始める。

 密度を高めた情報空間の単位格子を侵食して行く。

 ベイグが自分の情報高密度体の手を伸ばすのと、闇が小さく破裂するのとが同時だった。

 一瞬、互いの感覚が共有状態になる。

 ベイグの記憶野に、見知らぬ男の声が残る。

『ほう、結構楽しめたよ。あばよ』

 その声を最後に、気配は情報空間から消えた。

『ベイグ、何があったの!』

 スラッドの声で、ベイグは我に返った。

『今、侵入者がそこに・・・』

『なんですって?外部アクセスの痕跡はこちらからは無いわよ』

 そう言った途端に、次々と城塞システム上のデバイスがアンマウントされて行く。

『これはいったい』

 スラッドが戸惑う。

 そこへ、艦橋のオペレーターの声が届く。

『操艦中枢が制御出来ません。船が加速して行きます』

『なんですって』

 ベイグも確かめるが、システム上からも操艦中枢にアクセス出来なかった。

『DDが起動しています。このままでは、30秒後にダウンドライヴに入ります。行き先は予定合流宙域のままです』

『どうやら、他の艦も似た状況のようです』

 城塞システムに最後までマウントしていたファイフウも全艦載機が勝手に収容され、加速、ダウンドライヴで低次空間にダウンロードして行き、アンマウントされた。

 そして、ベイグの乗るジナスも後に続いた。