ベイグはふと、気配を感じた。

　この城塞システムの最上位管理区域に彼女以外のアクセス者がいる。

　あってはならない事だった。

　だが、気配以外の違和感を感じない。

　どこだろうか、光に満たされた真っ白い情報空間の背景を見渡す。

　ふと、目を留める。

　そこに小さな闇が浮いていた。

　吹けば飛んで行ってしまいそうな、闇の塊。

　タグを見ると探査プローブの情報高密度体だった。

　だが、それはあり得ない。

　探査プローブは送信ラインしか与えていないし、だいたいアクセス権は最低だ。

　だとすると、見かけが探査プローブなだけで、中身は敵の不正アクセス者か。

　ベイグは相手に気付かれないように、情報空間の密度を高めて、誰何した。

「そこにいるのは誰？」

　黒い小さな闇が驚いたようにコミカルに跳ねる。

　逃げようとするそれを密度を高めた情報空間で囲う。

　情報高密度体のタグから、アクセスしてきている位置と時間を探ろうとするが、うまく読み取れない。