そこへ情報空間からラインが降りてきた。

 予想通り、その鋭いラインは、受信プロトコルを含んでいた。

 ラインが相互になった途端、上位者からの監視プログラムが探査プローブの情報高密度体を走査。異常を発している排障システムのOSを削除して、新規のものをインストールして行く。

 現実空間ではほんの一瞬だが、情報空間に感覚をシフトしているブンガクにとって、それは充分な時間だった。

 探査プローブの送信データに乗って、ブンガクは帝国の管理する情報空間に入り込んだ。

 ラインが相互である内が勝負だった。

 そこはシステムにマウントされた全デバイスからの情報が氾濫する空間だった。

 位置も時間もバラバラだ。

 ブンガクは探査プローブの情報高密度体に包まれながら、しばらく、情報の流れに身を任せた。

「なるほど、こいつは最下層の管理区域か。まあ、探査プローブじゃそんな所だろう」

 1人呟きながら、クーロンのハックウェアで探査プローブの情報高密度体をいじって、アクセス権の階層を上げてやった。

 途端に、氾濫していた情報に時間と秩序が現れる。

 もう1つの感覚がそっと囁く。

 まもなく、排障システムのインストールが完了すると。

 仕掛けるには、この階層ではまだ低い。

 ブンガクは更にアクセス権を上げた。

 情報が更に濃くなり、秩序を保ちながら、圧縮され、下方の白い闇に溶ける。

 どうやら、この白い空間が、この情報空間の最上層管理区域のようだ。

 ここからなら、瞬時に全デバイスにアクセス出来る。

「そこにいるのは誰?」

 いきなり、声が聞こえた。

 深味のある聞き心地の良い女性の声だ。

 ブンガクは探査プローブの情報高密度体の姿で上を見た。

 そこに、巨大な金色に輝く人型の情報高密度体が居た。