この時を待っていた。

 ブンガクは揺らぐ情報空間で、乗っ取った探査プローブの情報高密度体を抱えて、待っていた。

 超光速情報通信網を体感的に現している情報空間は、当然の事ながら、お互いの情報高密度体がラインと呼ばれる通信プロトコルで繋がっていなければ、閉じた世界だ。

 公共の情報空間なら汎用的に使用されているラインでアクセス出来るが、軍用の情報空間は専用ラインでないと相互アクセスすら出来ない。

 通常なら、そう言う情報空間には公共の情報空間にもアクセス出来るようにゲートが設けられているのだが、この強固な帝国の新システムはゲートを物理的に遮断してる可能性があった。

 しかも、排時接触してくるのならば、情報空間を管理している上位者に対して、こちらは無防備にならざるを得ない。

 情報共有で勝手な行動を取れば、その時点で不正アクセスが判ってしまう。

 強引にこちらから探査プローブを介してラインを繋げれば、上位者にすぐ判ってしまうだろう。

 ならば、上位者からラインを繋げてくるのを待てばいい。

 すでに探査プローブの情報空間上の姿である情報高密度体は複製していた。

 しかも、システム融合しているのは2機目。

 まだ生きている探査プローブだった。