情報収集用の単純な使い捨てなので、役目を終えたり、敵に鹵獲されそうになると、自壊する仕様になっているのだが、小惑星に着床し、情報偽装していたクーロンが戦闘宙域から弾かれたデブリとして接近。

 探査プローブの排障システムが起動すると同時に、近接通信用のレーザー受信からプローブのOSに侵入。

 更に接近し、触手を物理融合させて、完全に乗っ取ってしまった。

 帝国のシステム上では、この探査プローブは飛来したデブリを排障出来ずに破壊された事になった。

 システム上から削除される。

 これでは帝国のシステムに情報ラインを繋ぐ事は出来ないが、ブンガクの目的はそこでは無かった。

 ブンガクが欲しかったのは、帝国の通信フォーマットを持つ近接通信システムと排障システムだった。

 近接通信システムは、発信に排障システムのパルスレーザーを代用で使うように出来ている簡易通信システムだ。

 この探査プローブを介する事で、直接の接触は最初の1回で済ます事が出来る。

 ブンガクはクーロンのハックウェアで探査プローブの排障システムを起動、全周域にパルスレーザーによる帝国の排障システムへのハッキングを行った。

 数光秒まで届くレーザー通信によるハッキングは、周辺宙域に静かに広がり、後は感染した排障システムが、次の排障システムに対してハッキングを行った。

 こうして、連鎖的に戦闘宙域近傍の探査プローブと帝国戦闘艦に搭載されている排障システムの殆どがハッキングされていた。

 だが、何れも本体の情報空間に接続出来るレベルでは無い。

 超光速情報空間とは比べられないほどの低い通信量しか確保出来ない。

 だが、ブンガクはその緩やかな通信網を確実に増やし、現在に至った。

「全ての艦船の正確な位置と情報空間上の通信量はこれで判った。仕掛けは上々、後はタイミングを待つだけだ」

「そうね。そろそろ来るわよ、ザカーエッジが射程に入った」

「それじゃあ、仕上げと行きますか」

 ブンガクはタイムラグを考慮して、仕掛けを起動した。