「目標、有効射程に入りました」

「ハイジェルマン粒子砲、1番2番、撃てっ!」

 2門のハイジェルマン粒子砲から、漆黒のビームが砲身を爆縮させながら放たれた。

 光速で突き進むビームは目標との間にある無数の岩塊と戦闘ユニット群を飲み込み、その先にいるプラント艦の艦首と艦尾のユニットに命中した。

 ハイジェルマン粒子砲は重子加速による光速質量兵器だ。

 それはブラックホールをビーム状に撃ち出すことに等しかった。

 プラント艦は撃ち込まれたブラックホールの潮汐力により、粉砕。重力の井戸に飲まれ、消失した。

 同時に制御をプラント艦に委ねていた無人戦闘ユニット群は機能を停止した。

 放たれたビーム状のブラックホールはその生成の不安定さから、発射されて半秒で蒸発してしまった。

「敵プラント艦完全消失を確認。ハイジェルマン粒子砲空間固定解除、廃棄確認」

「全軍に撤退指令、全力で現宙域を離脱。合流予定ポイントに向かえ」

 情報共有で、生き残っている全兵士から了解のサインが届く。

 そしてザカーエッジは、そのままのコースで小惑星帯を抜け、DD臨界速度まで加速を開始した。