ほんとに十分理解してた。
全部承知の上で恋してたんだ。
それなのに…こいつは……
大野君をキッと睨みつけるとさっきまで驚いた顔してたのに、もう無表情に戻ってることに気づいた。
しかも若干あたしを睨んでる。
「な、なに?」
「じゃあ、なんで可愛くなろうしねぇの?」
え……。
「好きな相手にちょっとでもよく見えるように頑張るのが普通だろ?
分かってるとか言ってる割には、周りのやつらに比べてそんなに努力してないように見えるんだけど」
大野君は固まってるあたしをまっすぐ見て言った。
「そんな屁理屈言う前に、自分に自信が持てるようになるまで努力すれば?
そんであいつを落として見せろよ。」
「………。」
何も言わないあたしに大野君は鍵を渡して、
「ここの鍵だから。
ちゃんと閉めて職員室に返しといて」
それだけ言って部屋を出て行った。

